

日本国内では、今のコメの国際価格なら国内農家も充分やっていけるではないかという話も出てこよう。
これまで農作物の輸入自由化の流れに押され気味だった農水省あたりが、いきなり元気になるかもしれない。
これまで多くの発展途上国では、農地を次々と工業地へ転換して発展してきたが、今回のことでその種の工業化にもブレーキがかかることになろう。
人民元高によるインフレ抑制を進める中国その一方で、中国はここに来て人民元の上昇を容認しており、人民元はとうとう一ドル6元台に入ったが、このことと国際的な食品価格の上昇は、2つの意味で大きな関係があると思われる。
まずは国内のインフレ抑制であり、中国共産党にとって、インフレの拡大はそれこそ政権の存続を危うくするものとして大変警戒されている。
1940年代、当初は劣勢だった共産党が最終的に国民党に勝利したのも、国民党政府がインフレを引き起こしてしまったことが大きな要因だったからだ。
また1989年の天E門事件が発生した原因の一つもインフレだった。
インフレ問題以上に、人民元の行方にとって重要なのが、価格が上昇しているのが小麦など、中国の農民も多く生産に従事している産品であるということである。
つまり、これまで中国政府が人民元の上昇に慎重だったのは、人民元が上がると海外からE価な小麦などが大挙して中国に流入し、そのことが、ただでさえ生活が苦しい中国の農民を直撃してしまうのではないかという懸念があったからだった。
今の小麦の国際価格なら、中国の農民は海外からのE価な輸入を心配する必要がなくなり、その意味では、人民元上昇に対する大きな障害の一つが取り除かれたことになる。
中国政府にとって、農民の問題さえなくなれば、後はインフレ退治ということになり、その意味では、農作物の価格が高水準で推移する限り、彼らが今後とも人民元の上昇を容認する可能性はかなり高いと見るべきだろう。
食品価格の上昇は、それらを生産している農民の所得を上げることになるが、その一方で、都市化が進んだ発展途上国では、大きな政治・社会不安の原因となりかねない。
問題は何が原因でこのような事態になったかだが、ここでよく言われるのが、バイオ燃料から来る需要増と畜産業から来る需要増である。
これらが重要な要因であることは間違いないものの、それだけで、それまでスムーズに機能していた国際穀物市場が一気に3倍になるかと言われれば、誰もが疑問を持つだろう。
民間の貯蓄余剰を吸収するためには世界レベルでの財政出動が必要それでは当局に何ができるかということになると大いに議論のあるところだが、ミクロではバブルに加担しているとしてこの種の投資に警告を発し、場合によっては、このような市場への参入規制を強化するということも考えられよう。
インドではすでに一部の穀物先物市場を閉鎖するという動きが出ているし、先進国の商品市場でも参入規制を厳格化しようという動ドル危機に世界はとう対処すべきかきがある。
ただ仮に、一部の商品市場への参入を規制したとしても、資金は他の商品市場に逃げるだけであり、その効果は限定的なものになりかねない。
問題の原因が資金の借り手不足というマクロ経済にあるとしたら、政府としてできる解決策は、投資減税等で民間企業がお金を借りてでも投資をしたくなる環境をつくるか、るが、政府はいつまでも財政赤字を出し続けるわけにはいかないので、中長期的には民間の資金需要の回復に資するが不可欠だろう。
これらはいずれもバランスシート不況に陥った経済がその対応策として採用すべき財政政策であり、これはいかに各国の民間資金需要の低迷が世界的に大きな問題であるかということを示している。
しかも、このような対策は、民間の貯蓄が過剰となっている多くの国々で同時に実施しなければ食品価格等への効果は薄い。
その意味では、IMFやOECDなどの国際機関でこのような問題が討議されるべきなのかもしれない。
実際、O8年4月のIMF総会では、パドア・スキオッパ、イタリア経済財務相(当時)がサブプライム関連の問題は世界経済が抱える問題の一つにすぎないと発言していたが、同相が懸念を表明した食品価格の上昇とサブプライム問題が実は同根、つまり先進国における民間資金需要の減少が原因であるとすれば、この資金需要不足を解消することがIMFを含む各国当局の最優先課題であるべきだろう。
ストロスカーン専務理事が1月26日のダボス会議と同様に、世界各国が積極財政に打って出るべきだと発言したが、この処方筆はまさに極めて適切だと言える。
同氏が積極財政を言い出した始まりは、金融政策だけに頼ってもサブプライム問題の解決は進まないということであったが、財政政策が民間の過剰貯蓄を吸い上げるという側面があることを考えると、むしろ財政出動こそが世界経済が直面している問題解決の核心に迫るものであると言えるのである。
民間企業の資金需要を投資減税で増やす政策は、減税という財政出動であり、またその財源を確保するために政府が発行する国債は、民間資金需要が弱く、行き場を失った投資資金が商品市場を介して世界にインフレをもたらすという構図はこれまで発生したことがなく、経済学界で議論されたこともなかった。
これまでの経済学は、すべて民間資金需要はあるという大前提の上に構築されてきたからだ。
バブル崩壊で火傷した民聞がゼロ金利でも借金返済に走り、「借金拒絶症」に陥ると投資資金は行き場を失い非伝統的な投資対象を探さざるを得なくなる。
その意味では民間の資金需要が正常化するまでは政府が財政出動でこの種の資金を吸い上げない限り、非伝統的な投資対象でバブルが発生することは避けられないということになる。
IMFは6O年ぶりに財政出動の重要性を言い出したが、金利水準で見れば世界で最も財政出動の余力がある国は日本である。
財政政策の経済に対する負担を示す指標が国債の金利であり、その金利が一番低いのが日本だからだ。
国債の金利は高ければ高いほど政府の財政赤字が民間の資金調達を難しくしているということになり、例えば、以前イタリアで10年国債の金利が一4%あったことがあったが、その場合民間は14%を大幅に超える金利を払わなければ資金調達できなかった。
そのことは当時のイタリアの巨大な財政赤字が経済全体に大きな負担を強いていたことを示している。
当時のイタリア政府がこのような大きな財政赤字を出していなければ、民間はずっと低い金利で設備投資ができたはずだからだ。
今の日本の10年国債の利回りは2%を割っており、これはほぼ人類史上最低の水準である。
あの失業率が25%に達した1930年代のアメリカの大恐慌でさえ、10年国債の金利低下は1・85%止まりであった。
この超低金利は民間に借り手がいなく、金融市場が政府に対して、将来の国づくりに必要な公共事業や減税があれば、それはぜひ今やって下さいとお願いしているようなものである。
バブルやバランスシート不況に陥る前の通常の日本の国債利回りは5、6%あったからだ。
それを今は2%以下で借りられるわけだから、それで必要な公共事業をやる方が景気のためにも将来の納税者のためにもはるかに有利になる。
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